建築知識ビルダーズ50 ザッと読んでみました。
気になる点が色々あったので、換気や空調を施工する側の視点からブログに書いてみる事にしました。
換気
・熱交換換気はダクトの汚れが気になるところですが、フィルターBOXは外につけたほうがいいですね。室内につけると屋外からフィルターBOXまでの配管の汚れがフィルタリングできないです。
日本では手に入りませんが、ヨーロッパのものはフィルターが非常に大きく安心感があります。外付けフィルターを採用すると、驚くほど室内のダクトがきれいになります。(外部フィルターの清掃は必要)
・外部フィルターの良いところは、虫などの処理を外で行えるところです。室内に設置するとまだ生きている虫と室内で格闘する事になりますので、蓋を開ける前に掃除機をスイッチをいれて構えるなど注意が必要です。
・掲載されている換気のダクトは断熱の厚みが薄い。関東ではどうかわかりませんが、外気が0℃を下回る地域では結露するので気を付けたほうがいいです。グラスウールであれば密度にもよりますが、25㎜~50㎜あったほうが、結露防止+燃費が向上します。
・換気の機種選定をする際に、熱交換効率に対する消費電力や有効換気率(%)なども良く見たほうが良いです。計算するとカタログ値よりずいぶん低い値になるケースもあります。
・換気の設置場所については、洗面所とありましたが、日本の場合はシューズクロークや納戸などの収納スペースが好ましいと思います。メンテナンスが必ず必要な換気は建物のオーナーがメンテし易い事が最優先ですので、機械室と収納スペースを兼用できる事が無理なく設置できる場所であると思います。(写真をクリックすると大きくして見れます)
・換気のマニュアルやお掃除カレンダーなどを置いておくと便利です。お客様から販売店への問い合わせの回数も減ります。
・熱交換換気と3種換気が混合する場合の熱損失についても記載したほうが良いですね。レンジフードやお風呂の換気が3種の場合、小さい家だと、熱交換換気で熱交換できる風量が50%になってしまうケースがあります。
・機種によっては、熱交換換気なのに本体に断熱がされていない部位があるものが存在します。分解するか、稼働状態で赤外線カメラで測定するなど、プロにしか見分けられません。
・熱交換換気と3種・パッシブ換気の熱損失の比較をしたほうが良いですね。これからカーボンニュートラルに向かう必要があるので、熱損失や光熱費にどのくらい差が出るか、キチンと評価する必要があります。
空調
お題が全館冷暖房なのでしょうがないかもしれませんが、結論が偏り過ぎのような…。
体感温度に対する考え方が記載されていないので、前先生の解説を入れて頂き、中立性を高める必要がありそうです。
全館空調の一番の問題点は各個室の温度調整が難しい点です。世帯が異なり体感温度に差がある方と同居する場合、個別の温度コントロールできる方法が無いと、あと少しの調整で困ってしまう事になります。特にご高齢の方などは今までのコタツや解放式のファンヒーターなどを使う事に慣れているので、高気密住宅には適さない器具を使い、事故につながったケースもあるなど、光熱費や環境を悪くしてしまうだけでなく、事故や火災に繋がる可能性があるので、その部分は十分に説明する必要があります。
・メーカーの保証が受けられない施工方法も一部掲載されているので前提条件として、自己責任で導入する事が必要ときちんと大きく書く必要があります。
・壁掛けエアコンは個室の空調機器なので本体にセンサーがあるので本体を隠蔽して全館暖房に使う機種として作られているわけではありません。隠蔽した空間の温度を読み取るので居室内との温度差が生じ、思うように温湿度を調整できない場合があります。全館空調用にはダクト式のエアコンがあり、室内側に設置されたリモコンで温度感知するなどユーザー側の操作に矛盾が生じにくいです。
・高性能住宅の断熱手法を獲得して自信のある工務店さんは個々の方法を模索しているように見受けられますが、様々な換気や空調設備は日本だけでなく、ヨーロッパなどでも既にやりつくされています。新しい事例は発表しやすいですが、失敗事例の共有をする事で読者に正しい情報をユーザーに届ける事が出来ると思います。
・換気はCO2やVOCなどの汚染物質、水蒸気や匂いなどを排出し、室内を新鮮な空気を供給する事が重要ですので、一旦立ち止まりユーザーが住む住宅内の空気質の向上や生活の安全性を第一に取り組んでいただければと思います。
まだまだ書きたいところはありますが、そう言った点で今後は偏りのない記事にして頂きたいと個人的にそう思いました。