昨今では、全館空調が話題に上る事が多いですが、東北のように冬期が-10℃になるような地域の場合、当社では、体感温度が高い放射暖房をお勧めしています。
どのような違いがあるのか解説していきたいと思います。
体感温度の指標として、国際基準のISO7730「適度な温熱環境 PMVとPPD指標の決定と熱的快適の条件」というものがあります。
適度な温熱環境 PMVとPPD指標の決定については、ちょっと難しいので後の回で書こうと思いますが、熱的な快適の条件について、6つのポイントを解説していきます。
人間が家の中で安静にしているときに、暑くも寒くもない温度が(22±2℃)と言われています。住宅性能が低くかったり、暖房の温度を上手く調節出来ないと、寒さを感じたり、暑すぎると感じたりします。
床から10㎝のところは丁度足のくるぶしのあたりに寒さを感じやすい場所になります。1.1mは成人が座った時の頭の高さを表していますが、10㎝のところと、1.1mのところの温度差が大きいと寒さを感じ安いのですが、原因は断熱性能が悪い窓や壁に起因します。最近では高性能な窓が手に入りやすくなっていますが、予算の都合で窓の予算を削ってしまい性能が悪くなった場合、窓に冷やされた空気が冷気(コールドドラフト)となり、寒く感じます。窓の下に放熱器があると、コールドドラフトが抑制され体感温度が高くなります。
床の温度は直接足に伝わるため大変重要ですが、断熱性能を上げる事で熱が床から逃げなくなり、窓のコールドドラフトの対策などで床暖を使わなくても素足でも生活できる温度にする事が出来ます。また、床材は柔らかな質感の床材の方が熱伝導率が低く暖かく感じやすいです。床暖房を行う場合、暑すぎると足が重苦しくなったり、寝そべったり出来なくなるので、小さいお子さんがいる場合は熱中症にも気を付ける必要があります。住宅性能が良い場合は、床面の温度を29℃以下にしても暖かく感じる事が出来ます。
冬でも風の無い日中は日向だと暖かさを感じるように、風(気流)の有無で体感温度が変わります。これは、体の表面に体温で暖まった空気が気流によって移動して温度が変化する事で感じます。
住宅の中での気流の原因はいくつか挙げてみます。
①住宅に隙間 暖まった空気が天井から逃げる事で床付近から冷たい空気を引っ張ってしまい、床面に隙間風が生じます。断熱気密を行う事で防止する事が出来ます。
②サッシ 性能の悪いサッシは結露をする事が前提で作られており、結露水を排出する為の排水溝やサッシの隙間から隙間風が発生します。また、性能が悪いサッシからはコールドドラフトが発生し、室内に気流が走り寒さを感じます。高性能サッシ(樹脂・木製トリプルサッシ)の導入で防ぐ事が出来ます。
③換気 3種換気やレンジフードなどによって発生する冷たい気流が生じます。機器の選定や風量測定などで緩和する事が出来ます。
④暖房方法 対流方式(エアコン・FFストーブなど)を使用した場合、気流を発生させて暖房するので体感温度がさがるので、室内設定温度を高めに設定する必要があります。放射暖房を採用する事で防止する事が出来ます。
壁の断熱が足りなかったり、窓の性能が悪かった場合、部屋の壁面が寒く感じる事があります。また、ある程度の性能になっても、暖房の温度が高くなる場合は、暑さを感じる事があります。
壁はHGW200㎜以上、窓は樹脂か木製トリプルサッシにする事で、暖房を低温で賄う事が出来て、ストレスのない温度環境になります。
天井の温度が暑いと不快に感じるため、放射温度差は10℃以下が好ましいですが、エアコンや高温の床暖が上の階にあった場合、天井が10℃以上になる場合があると思います。
頭寒足熱が良いと聞く事がありますが、断熱気密が良い場合、上下の温度差は無くなるので、頭が寒くなる事はありません。住宅の営業でそのような言葉を聞いた場合は要注意です。